このまま借金が増え続けたら日本はどうなる?

浜林正夫  2011.12.29付 

 

2012年度の政府予算案が決まりました

 

政府案によると2012年度の一般会計予算は総額903339億円で、これだけの支出を賄うための税収は423千億円にしかありません。つまり収入は支出の半分以下、46.8%しかないのです。不足分はいうまでもなく借金(国債)で賄うことになります。  

 

 国の借金には国債以外に政府借入金や短期証券などがあり、これらを全部合わせると20119月末で9544千億円に達しており、これに来年度に新しく発行する442千億円を加えると9986百億円となります。

 

これは一般会計の話で、そのほかに特別会計として大震災復興のための復興債268百億円を発行するので、これを加えると国の借金は1千兆円を突破します。

 

 日本の国民が1年間に稼ぎ出す国内総生産(GDP)は500兆円弱ですから、その2倍以上の借金をしてしまうことになります。 

 

 このように赤字国債が増えはじめたのは1975年からで、それは田中角栄の「日本列島改造論」やアメリカの押し付けによる公共事業の拡大のためだったのですが、歴代内閣は借金を増やすばかりで、これをどうやって返済するつもりなのか、まったく何も言いませんし、学者やジャーナリストのなかからも少しも意見が出てきません。皆、まあなんとかなるさと眼をつぶっているのでしょうか。それよりも来年の暮らしの方が心配だという人が多いのかもしれません。

 

 暮らしに関係のある問題ではまず消費税です。現在消費税の税率はご承知のとおり5%ですが、これを2015年までに段階的に10%まで引き上げようというのが民主党案です。ただし、これはまだ予算案には乗っていませんので、早くても2013年度からということになります。消費税は典型的な大衆課税で貧乏人にも金持ちにも同じようにかかってきます。その点を考慮してヨーロッパ諸国のなかでは生活必需品(とくに食品)には消費税をかけない国がいくつもあります。消費税は1%で税収が2.5兆円増えるので5%引き上げれば125兆円増収になると見込んでいるようですが、消費税が上がれば消費を節約する人が多いでしょうから見込みどおりに行くかどうかは疑問です。いずれにせよ、消費税引き上げ反対の運動を早急におこしていかなければなりません。

 

 所得税増税の話も出ていますが、予算案には乗っていません。 

 

 年金は削減されます。年金は物価スライド制で物価が上がれば年金も上がり、物価が下がれば年金も下がることになっているのですが、以前物価が下がったときに特例で年金を下げなかったので、この特例を解消するという名目で2012年秋から0.9%下げ、さらに現在物価が下がっているからといって0.3%下げ、計1.2%下げるとしています。この「特例解消」というのも妙な話ですし、物価が上がったとき年金も上がったという記憶もありません。よくわかりませんが、どうもゴマカシがあるような気がします。

 

 一方法人税は5%引き下げ、証券優遇税制は2年間延長されます。ここにも財界優先の本音が見えています。 

 

 直接暮らしには関係しませんが、公共事業費が大きく増えるのが特徴で.八ツ場ダム(56億円)、岩手県胆沢ダム(111億円)、整備新幹線事業費(7百億円)、震災復興費の一部も含まれ、合計53千億円となっています。また原発・エネルギー関連予算も前年とほぼ同額の4188億円となっています。

 

 また軍事費は前年より少し減りましたが、依然として47千億円とかなり多額で、そのなかには米軍関係経費や次期戦闘機F35の購入費もふくまれています。 

 

 野田首相は「増税と社会保障の一体改革」といっています。それは増税分を社会保障に回すという意味のようですが、どう考えてもそのようには思われません。むしろ増税も社会保障切り下げもやるという「一体改革」なのではないでしょうか。 

 

 戦後すぐのころアメリカからシャウプを団長とする使節団がやってきて日本の税制の改革を勧告しました。その原則は消費税のような間接税をもうけず、直接税(所得税、法人税)中心で、しかも累進性を高めるということでした。これこそが民主主義国家にふさわしい税制なのです。いまもう一度この勧告をふり返ってみるべきではないでしょうか。